
養生訓と健康・長寿 東洋医学研究所?所長 黒野保三
メタボリックシンドロームの診断は腹囲が基準以上であることに加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち二つの基準を満たす場合とされています。
健康維持の大切さについては、鍼灸診療(東洋医学)の基本として、未病治(病気にならないための鍼治療)と養生法(生活習慣法と食事療法等々)に記載されています。
貝原益軒の養生訓は「人の身は父母を本とし天地自然を良とす。天地自然の営みにより父母の恵みを受けて生まれ、また養われるわが身なれば、わが私の物にあらず、天地の御賜物(天地自然から賜った身体)なれば、慎んでよく養ひて、損ない破らず、天年を長く保つべし。これ天地自然を尊び父母に仕え奉る孝の本なり。身を失ひては仕ふべきようもなし。わが身の内、少なる皮肌(皮膚)髪の毛に至るも、自然と父母に受けたれば、みだりに損ない破るは不孝なり」から始まっております。
鍼治療については、「鍼を刺すことは如何、曰く、鍼を刺すは、気血の滞りを元気に導く」と、老若男女や小児に至るまで、鍼治療により病気を未然に防ぐ「未病治」を説いております。
また、「老いの人は、薬治、鍼灸、導引(ストレッチ)、按摩を行うにも、にわかに、癒さんとして荒くすべからず。荒くするは、速効を求むるなり。たちまち禍(わざわい)となることあり。もし当時、快しとしても後の害となる。」と強い治療を戒めております。
灸治療については「人の身に灸をするは、如何なる故ぞや、曰く、人の身の生けるは天地自然の天気を受けて本となす。元気は陽気なり。陽気は温かにしてよく万物を生ず。灸の力にて陽気を助け、気血を盛んにして病を癒すの理なるべし。」と説いております。
養生法についても、鍼・灸・薬草と同様、多岐・多彩、ここで述べることは万分の一くらいしか述べられないほど多く書かれております。したがって、さわりの一つを述べさせていただきます。
「朝は早く起きて、手と面を洗い、髪を結い、事をつとめ、食後には腹を多く撫で下ろし、食気をめぐらすべし。昼間にいて、ときどきわが体力の辛苦せざる程の労働をなすべし。夜は早く寝て明日に備える。」
怠らず労働するのが養生の道であり、臥して寝る時間と回数を少なくすること、また、精神の養生は「小慾にして大きい慾をむさぼるは体を破る愚。心を安らかにして、身を労しめよ。慾しいままは短命、忍べば長命、愚を思い防ぐことの必要性、元気を養うことに努めよ。」等々、精神を養うことの大切さも養生の道であります。
鍼灸医学では無限に近い数多くの先人が自己の経験を後世に残そうと書き記した物が書籍として残されております。そこには、現代科学では解明されておりませんが、非常に大切なものや心理が組み込まれております。

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