(公社)生体制御学会第278回定例講習会に参加してきました
2016-02-10 15:43
東洋医学研究所
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
平成28年2月7日(日)(公社)生体制御学会第278回定例講習会(愛知県鍼灸生涯研修会)に参加してきました。

(公社)生体制御学会第278回定例講習会
(愛知県鍼灸生涯研修会)
 
9:30〜10:20 基礎生理学
生理学トピックス
「自律神経機能評価研究について」
(公社)生体制御学会会長 
(公社)生体制御学会研究部長
皆川 宗徳先生 

今日は黒野保三先生の鍼刺激に対する自律神経反応の評価研究について紹介していただきました。
「黒野保三先生は早野順一郎先生と自律神経について8年共同研究をされています。アメリカの『オートノミックニューロサイエンス誌』と日本自律神経学会の『自律神経』に論文が掲載されました。
2011年に黒野保三先生は、『オートノミックニューロサイエンス誌』に『?中穴への鍼刺激は、心拍変動における心臓迷走神経成分を増加させ、中庭穴では増加しない』と題して経穴特異性を報告しています。この研究は、人における自律神経活動の客観的な指標を使用し、得気を生じさせない筋膜上圧刺激の自律神経への影響を報告したはじめての論文になります。
筋膜上圧刺激を説明すると、まず、海外では『得気』を得る鍼刺激を基本としています。『得気』とは、鍼をさした時、しびれ、重い感じ、うずき、締め付けられるような感じを起こす刺激をいいます。この刺激は強い刺激になります。また、海外では、鍼治療の手技の中に置鍼、雀啄、旋捻、電気鍼の英語はありますが、単刺術はありません。これらのことから、黒野保三先生は、2011年に『オートノミックニューロサイエンス誌』に投稿される時、『筋膜上圧刺激』という鍼による弱い刺激の言葉をつくりました。
筋膜上圧刺激については、黒野保三先生が研究をした裏付けから『筋膜上圧刺激とは、鍼を筋膜の深さまで垂直に刺入し、筋膜を貫くことなく、筋膜上に20gの圧を加え、すぐに抜鍼する刺激方法である。』と定義づけています。
次に2012年に『心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価―腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価―』と題して、中?穴、天枢穴、気海穴という腹部経穴に鍼刺激をした場合、心臓副交感神経が高まることを報告しています。この心拍変動解析を用いて、腹部鍼刺激の自律神経の影響を評価したことは、はじめてになります。
2013年には、『心臓と胃の自律神経機能における筋膜上圧刺激の部位特異的臓器選択的効果』と題して、中?穴、次?穴、足三里穴、内関穴の経穴を用いて心拍変動解析と胃電図を解析して報告しています。この中で、中?穴は、心臓副交感神経が高まり、胃電図は変化ありませんでした。また、次?穴は、胃電図において周波数が減少し、胃の副交感神経が高まりました。足三里穴、内関穴では心拍変動解析、胃電図共に変化ありませんでした。中?穴のみ、心臓副交感神経、次?穴のみ胃の副交感神経という、自律神経における体表面への鍼刺激の部位特異的、臓器選択的効果を支持する研究を報告しています。」という主旨のお話を、詳しく説明していただきました。




10:30〜12:00 基礎生理学
「体性感覚と運動」 (公社)全日本鍼灸学会認定指定研修C講座
愛知医科大学生理学講座教授  
岩瀬 敏 先生

今回は体性感覚についてお話して頂きました。
「話す3つの要点があり、?ヒトの体性感覚には、触圧覚、温痛覚、識別覚、振動覚、固有感覚があること、?触圧覚は前脊髄視床路、温痛覚は外側脊髄視床路、残りは後索路を上行すること、?それぞれの感覚にはそれぞれの受容器があり、それぞれの神経により伝達されることが重要になります。
体性感覚とは、皮膚感覚、深部感覚、内臓感覚を指します。視覚や聴覚とは異なり、感覚器が目や耳のように外からはっきりとはみえないのが特徴になります。受容器は、パチニ小体、マイスネル小体、メルケル触盤、ルフィニ小体、毛包受容器があります。パチニ小体は、速い振動、マイスネル小体は遅い振動の皮膚感覚によく反応します。メルケル小体は持続的な圧力、ルフィニ小体は持続的な皮膚の変形によく反応します。
1960年代から感覚の研究が行われ、1984年にスウェーデンのバルゴがマイクロニューログラフィーを使って様々な研究を行っています。研究により、マイスネル小体は閾値(反応する最小の強さ)が50Hz、パチニ小体は300Hz、ルフィニ小体は60〜70Hzとわかっています。
二点識別覚は、皮膚表面に同時に与えた2つの触覚刺激を2つであると認識できる最小の距離になります。手はかなり短い距離まで識別できますが、背中は感覚がにぶいので、手などに比べると長い距離でも2つの刺激を1つと感じる場所です。また、口唇も手と同じく感覚が良いので二点識別覚が短く、ふくらはぎは背中と同じく二点識別覚が長くなります。
もっと高等な感覚で立体認知というものがあります。簡単に言うと、ポケットに入れたものを見ずに、触っただけでわかる感覚になります。難しく言うと、視覚ではなく、手触りで物品を同定することを言います。これは、筋紡錘によってわかるようになっており、熟練の職人になると、0.1gの差がわかると言われています。
温冷覚、痛覚について、Aδ線維は鋭い痛み、C線維は鈍い痛みを伝えます。C線維にはポリモーダル受容器があります。痛みを生じる物質にはカプサイシンがあり、ハバネロ、唐辛子などに多く含まれています。キニン、プロスタグランジン、P物質が痛み感覚を神経にもたらします。痛みは悪循環を起こすので、この悪循環をどこかで断ち切ることが重要で、このことが治療になります。」ということを教えていただきました。




            
13:00〜13:50 循環器疾患の基礎・臨床、診断と治療
循環器の基礎・臨床、診断と治療
「血圧測定の意義4」
(公社)生体制御学会研究部循環器疾患班副班長 
加納俊弘 先生 

今回は、血圧測定の意義と題して、コロトコフ音記録計を用いた血圧測定について、血流パターンからみた病態の把握の仕方や記録図についての説明がありました。
また、『起立性低血圧に対する鍼治療の一症例』と題した症例について、起立性低血圧のために立っていられなかった症例に対し鍼治療を施したところ、日常生活に不自由をきたさないまでに回復した症例についての報告があり、臨床経験をもとに、注意点について教えていただきました。
        


14:00〜14:50 循環器疾患に対する症例報告及び症例検討
循環器疾患に対する症例報告及び症例検討
「母指の痛みに対する鍼治療の検討
―低血圧症状の改善がみられた一症例―」
臨床鍼灸医学研究会会員  
近藤 利夫 先生

今回は、低血圧についての分類や治療基準についてのお話がありました。
また、「母指の痛みに対する鍼治療の検討 ‐低血圧症状の改善がみられた一症例‐」と題した症例報告では、鍼治療により、低血圧症状の改善がみられ、ふらつき、立ちくらみが消失し、母指の痛みも軽減した症例についてスライドを用いて詳細な報告がありました。


15:10〜16:00
鍼灸学校学生向け企画 婦人科疾患の基礎と臨床
「不妊のための鍼灸 子宮の環境について」
明生鍼灸院副院長
木津 正義 先生

今回は子宮の環境について、不妊症に対する鍼治療についてお話しいただきました。
「前回までの簡単なおさらいとして、妊娠に必要なことは、男性は精子、精子の輸送、貯蓄、射精などがあります。女性は子宮、卵胞、卵子、排卵、ホルモン分泌などがあります。ホルモンには卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、エストロゲンなど様々なホルモンがあります。
鍼灸治療は2次卵胞から3ヶ月の間が大切で、どのようにしていい卵子に育成させる環境を作るのかが大切になります。駄目になった卵子を良くすることは鍼灸ではできません。卵子を駄目にしない環境作りをすることが大切になります。
子宮はとてもすごい臓器で、妊娠前に縦7cmくらい、2mlなのが、妊娠後には40cm程度、5000mlまで大きくなります。まさに2500倍のびる臓器なのです。また、卵巣は閉経と共に機能を失いますが、子宮はホルモンがあれば60歳でも妊娠できる臓器です。実際に閉経後の60歳であってもホルモンを整えることで代理出産ができる状況になります。鍼灸治療は、子宮の血流を良くすることができます。病院の先生との共同研究で、9例の被験者に中?穴に鍼治療をしたところ、子宮動脈の血管抵抗値が有意に下がりました。これは、子宮動脈の血流が良くなったことを示します。このように、鍼灸治療をすることで、血液がホルモンを運んで子宮に届けることで、妊娠の環境を整えることができる最適な治療法になります。
実際に平均年齢38.6歳、平均ART(高度生殖医療)回数11.8回の難治性不妊の方の18例中40%の方が妊娠できました。
不妊治療に大切なのは、前回お話しした卵巣は陰部神経鍼通電、今回、子宮は中?穴に鍼治療と話しましたが、自律神経を整えることがとても重要になります。黒野保三先生が提唱されている筋膜上圧刺激による鍼治療で妊娠ができる環境作りをすることが大切になります。」いう主旨のお話をいただきました。


このマークのついている先生は東洋医学研究所?グループに所属しています。
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
検索
キーワード

カテゴリ
よくある質問 (10)
コラム (96)
患者さんの声 (101)
活動内容 (30)
研究業績 (13)
糖尿病通信 (11)
講演・メディア掲載実績 (19)
適応症の治療案内 (103)
月別アーカイブ
2017年8月 (3)
2016年2月 (4)
2016年1月 (3)
2015年12月 (3)
2015年11月 (4)
2015年10月 (5)
2015年9月 (4)
2015年8月 (3)
2015年7月 (5)
2015年6月 (4)
2015年5月 (4)
2015年4月 (2)
2015年3月 (4)
2015年2月 (3)
2015年1月 (3)
2014年12月 (3)
2014年11月 (5)
2014年10月 (4)
2014年9月 (4)
2014年8月 (3)
2014年7月 (4)
2014年6月 (6)
2014年5月 (5)
2014年4月 (3)
2014年3月 (6)
2014年2月 (6)
2014年1月 (2)
2013年12月 (5)
2013年11月 (4)
2013年10月 (6)
2013年9月 (5)
2013年8月 (3)
2013年7月 (5)
2013年6月 (4)
2013年5月 (4)
2013年4月 (4)
2013年3月 (5)
2013年2月 (6)
2013年1月 (4)
2012年12月 (3)
2012年11月 (7)
2012年10月 (4)
2012年9月 (86)
2012年8月 (75)
2012年7月 (15)
2012年5月 (1)
2012年4月 (1)
2012年3月 (1)
2012年2月 (1)
2012年1月 (1)
2011年9月 (1)
2011年6月 (1)
2011年4月 (1)
2011年2月 (2)
2011年1月 (1)
2010年12月 (1)
2010年11月 (1)
2010年10月 (1)
2010年9月 (1)
2010年8月 (1)
2010年7月 (1)
2010年6月 (1)
2010年5月 (1)
2010年4月 (1)
2010年3月 (1)
2010年2月 (1)
2010年1月 (2)
2009年12月 (1)
2009年11月 (1)
2009年9月 (1)
2009年8月 (1)
2009年7月 (1)
2009年5月 (1)
2009年4月 (2)
2009年3月 (1)
2009年2月 (1)
2009年1月 (1)
2008年10月 (1)
2008年9月 (1)
2008年5月 (1)
2007年6月 (1)
2007年3月 (1)
2006年11月 (1)
2006年6月 (1)
2005年11月 (1)
2005年9月 (1)
2005年8月 (1)
2005年6月 (2)
2005年5月 (1)

友人に教える
お問い合わせ

ホーム
上へ
東洋医学研究所

東洋医学研究所
このサイトは携帯電話向けサイトです。
携帯電話でご覧ください。