長寿社会を健康で長生きに暮らすために良い生活習慣と鍼治療を 東洋医学研究所?所長 黒野 保三 平成31年1月1日号
2019-01-01 15:35
東洋医学研究所
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謹賀新年
皆様におかれましてはお健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。今年は改元の年でもあり、皆様の益々のご健勝を心より祈念申し上げます。
2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳(香港87.66歳に次いで2位)、男性が81.09歳(香港81.70歳、スイス81.50歳に次いで3位)といずれも過去最高を更新しました。
また、センテナリアン(100歳を超えた人)は1963年の調査ではわずか153人でしたが、2017年には6万7,824人にまで増加しました。センテナリアンの女性が占める割合は87.5%を超えており、約9割近くが女性です。


 
さて、健康寿命とは、「医療や介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間の平均」を指します。厚生労働省の専門委員会が公開している2016年の全国の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳でした。平均寿命と健康寿命の差は、男性は8.84年、女性は12.34年であり、日常生活に制限のある期間はそれだけ長いのです。健康寿命を伸ばすことが、老後の生活にとって重要な要素であることがわかります。
2017年の3大死因は、1位は悪性新生物(がん)で全死因の27.9%、2位は心疾患で全死因の15.3%、3位は脳血管疾患で全死因の8.3%であり、がんで死亡した人は37万3,334人(男性22万398人、女性15万2,936人)でした。
1970年代のがん医療は、まだ旧態依然とした状況でありましたが、1980年代以降には大きな進歩がみられ、基礎分野では、がん発生のメカニズムの一端が明らかにされ、がん予防分野でも喫煙や感染症対策が進み、科学的根拠に基づくがん検診が推奨されるようになりました。
がん診断分野では、上部・下部内視鏡、CTスキャン、血管造影、MRI、超音波断層、腫瘍マーカーなど新しい診断技術の導入が進み、がん治療分野でも、内視鏡手術、体腔鏡手術、ロボット支援手術などの患者負担が少ない手術法が普及し、放射線治療や粒子線治療では高精度照射が追求され、薬物療法では、分子標的薬や免疫治療薬の開発とともに、術前術後補助薬物療法による治癒率の改善も図られるようになりました。
1980年代以降、がんの告知が一般化し、それに伴いインフォームドコンセントが普及し、患者がセカンドオピニオンを求める機会も増しました。国民は現在も「がんは不治の病」という意識が強いので、告知により患者・家族の悩みや負担はより一層重いものとなります。患者に優しい医療技術の普及と患者・家族支援が必要であります。
今後は、社会の人々や医療関係者が、がん患者・家族に向き合い、心の通う対話を通じて、真の意味での全人的医療と患者・家族支援をおこなわなければならないと思います。
(※ 新しいがん免疫療法を開発した本庶佑京都大学特別教授は2018年のノーベル医学生理学賞を受賞されました。)
また、長寿社会が直面する問題として認知症があります。認知症とは「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来すようになった状態」を指すものです。厚生労働省が実施した認知症の全国調査では、2012年時点での全国の患者数は約462万人と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約20%が何らかの認知症を有する)に達すると予測されています。
久山町研究によって明らかになっている認知症の危険因子は高血圧、糖尿病、喫煙であり、認知症の防御因子は運動習慣と、大豆・大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品、果実、芋、魚、卵の摂取量が多く、米、酒の摂取量が少ないという食事パターンを有する人でした。
加齢に基づく認知症の発症リスクは生活習慣病の予防や生活習慣の是正によって軽減できることが示唆されました。
私は30歳(1960年)の時から今日まで、東洋医学(鍼灸医学)が予防医学を本旨とし、1次予防(病気になる前の健康者に対して、健康の増進を図って病気の発生を防ぐ)、2次予防(病気になった人にできるだけ早期治療を行い、病気の進行を抑え、病気が重篤にならないように努める)、3次予防(病気が進行した後の後遺症治療、再発防止、残存機能の回復・維持をはかる)に適した医療であり、人の健康を維持するために、いかなる状態においても的確に対応できる医療であることに魅せられて、研究(臨床・基礎)、学会活動、弟子の育成に邁進してきました。
昨年6月にWHOの国際疾病分類第11回改訂版(最新版)に伝統医学(漢方・鍼灸)が追加され、今年の5月の世界保健総会にて採択されることが公表されました。100年以上西洋医学一辺倒であった世界の医療基準の大きな転換であり、古代中国を起源として日本や中国、韓国等に広がった東洋医学(漢方・鍼灸)が医学・医療として認められたことを意味しております。このことは私が長年念願してきたことであり、心より喜ばしく思います。
私は東洋医学の人の生命力(自然治癒力)を増強する人に優しい医療と、日進月歩する西洋医学の長所を融合することが長寿社会の全人的医療となることを確信しております。
私ごとですが、お蔭様をもちまして健康で90歳(卆寿)を迎えることができました。本年も「病気にならない体を作りましょう。健康で長生きできる体をつくりましょう。」を目標にして、皆様の健康維持のお役に立ちたいと願っております。

文献
○山口建(2018).国民・患者・家族の視点を重視したがん対策 月刊新医療,第45巻第11号,15.
○二宮利治(2018).認知症の危険因子と防御因子 日本医師会雑誌,第147巻・特別号(2),280−2.
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