今あらためて血圧に関するお話 東洋医学研究所?グループ  伸誠鍼灸院 院長 加納 俊弘 令和2年4月1日号
2020-04-01 17:36
東洋医学研究所
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昨年、「高血圧治療ガイドライン2019」が発表されました。
主だった変更点はリスクの高い糖尿病や腎障害のある方をより厳格な降圧目標とすることでした。

最近、いろんな立場の方々が、血圧に関して動画サイトなどを通じて、血圧は高くてもかまわない、むしろ血圧はある程度高い方が血流が良い、医療産業が降圧薬を売るために血圧を低く設定している、降圧薬を服用していると脳梗塞になるなどと発言をされています。
血圧の中身を考えずに血圧値だけで善し悪しを無責任に発信されることは決して有益なこととは思えません。また、このような発言をされた方々の中に鍼灸師がおられたことを大変残念に思っております。

今回、循環器の医師に紹介するにあたって患者さんにお伝えしていること、高血圧に関し臨床の現場で経験したことを、お話しさせていただきたいと思います。

血圧が高い方が血流が良いというのは誤った認識であります。
以前コラムでお話しさせていただいた中心血圧は心臓から出た大動脈基部の血圧です(平成21年9月1日号コラム:知って防ごう!動脈硬化Part3−手首の脈から得られる動脈硬化の新しい指標−)。
大動脈など太い動脈は弾性血管と呼ばれ、その先の末梢血管とともに、この弾性力が失われてくると中心血圧は高くなり、全身の血行動態も悪くなります。つまり、滑らかな血流が血管や脳や腎臓などの組織にダメージを与える血流に変わってしまいます。

残念なことに、降圧薬を服用しておられる患者さんもなかなか医師による血行動態の改善につながる生活習慣の指導や説明を受けている方が少なく、血圧値だけで一喜一憂されている方が多いように思われます。

患者さんに血圧の中身を説明させていただく時にいつもお話しすることは、この中心血圧の存在で、「80歳と20歳、身長、体重が同じで血圧120/80mmHg 脈拍80回/分という同じ数値のデータがあった場合どう思われますか」とお聞きします。ここで答えられる患者さんはおられませんが、「20歳の中心血圧はおそらく100mmHgない位でしょう。80歳の中心血圧は130mmHg位はある場合が多いと思います。」とお話しさせていただきます。

つまり、一般的に測られている上腕血圧では見えない血管リスクがあること、この中心血圧に影響する大動脈の弾性力の維持改善には食生活などの生活習慣の改善とともに有酸素運動が必要不可欠であること、有酸素運動はその他の基礎疾患がある場合は必ず医師の指導により行うこと、などがあります。年齢にもよりますが、有酸素運動は一般的には目標値40分以上、隔日行うことが理想であることなどを、お話しさせていただいております。

過去の臨床において血圧と症状がリンクした症例が数々ありました。

高血圧・糖尿病・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症の既往があり、足趾が黒く冷たい患者さんが1年ほど鍼灸治療に通われて、足趾の色の改善とともに血糖値と血圧の変動が安定してきました。

半年間も膝痛で理学療法の治療を受け改善が見られずに来院された患者さんは、降圧剤を服用されていたにも関わらず、午前中の血圧が180mmHg以上あり肥満と血糖値が高めでした。治療をさせていただき膝の痛みと熱感はある程度緩和してお帰りになったものの3日後に来院された時には、また痛みと熱感をぶり返し3回ほど治療させていただいた後に、循環器専門医を受診され原発性アルドステロン症が見つかり投薬の結果、血圧の正常化とともに膝の痛みと熱感も取れていきました。
 
また、同じく膝痛の患者さんで肥満と高血圧と心房細動の既往がありましたが、血圧と心機能が改善されてきたのと時を同じくして膝痛も改善していきまた。

また、残念な症例ではありますが、腰痛の患者さんでやはり上半身肥満があり、その方も午前中の血圧が高く肥満解消のための食生活などの生活習慣の改善と循環器専門医の受診を勧めたのですが、なかなか聞き入れられず鍼灸治療も離脱され、数か月後に脳卒中でお倒れになりました。

このように血圧は筋骨格系の炎症・疼痛症状にも少なからず影響を及ぼしており、その改善と管理が身体全体の健康に必要であると思います。

私は鍼灸治療の前にほぼ100%患者さんの血圧を測っております。そこで思うのは、自分の朝夕の血圧値を知るということ、血圧高値が頻繁の場合、食生活などの生活習慣の改善を行い、なお高い場合は血圧手帳(けんぽれんHP:血圧手帳)をつけた上で循環器専門医への受診をお勧めいたします。

今日、未熟ではありますが、鍼灸治療をさせていただくにあたり、知識の研鑽と鍼治療に対する姿勢を学ばせていただきました東洋医学研究所?黒野保三所長に深く感謝申し上げます。

参考資料
・血圧手帳:https://www.kenporen.com/health-column/ketsuatsu-techo/
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