元気になる食養生 東洋医学研究所?グループ 岡田鍼灸院 院長 岡田 静治郎 平成27年10月1日号
2015-10-01 07:49
東洋医学研究所
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はじめに
東洋医学には、病気にかかるずっと手前、健康な状態のときから実践していくことで、病気にかかりにくく、かかっても軽く済ますことができる生活方法が存在します。それが「養生」です。
患者さんの話を聞いていると、「え、そんなふうに過ごしているの。それじゃあ、こんなひどい体調不良になるよねえ・・・」と思うことがしばしばあります。その体調不良は、この生活習慣が原因で引き起こされています。
東洋医学の「養生」は難しいことではありません。「養生」には特別な機械やサプリメント、手順を覚えなければならない複雑なマッサージや、体操なども必要ありません。
季節や体質に合った適切な保護を生活習慣に加えることで体のパワーを増してあげる方法、それが健康なときに行う「養生」なのです。
毎日をリズミカルに過ごし、体内時計を一定に保つことによって、さまざまな体内の環境を一定に保つことができるのです。この積み重ねによって体力がだんだん増していって、余力が増えます。
養生によってわかるようになってくる「ほんのちょっとの不調」を、東洋医学では「未病」といいます。「未だ病ならず」という状態。これがわかることが何より大切なことです。
「未病」の対義語が「已病」です。これは、「已に病となる」という意味。
今は多くの人が長生きするようになりました。「未病」に鈍感な状態で年を重ねてしまうと、大きい病気をしてしまって、老後の生活で不自由をするかもしれません。楽しいことを目いっぱい楽しむためには、養生を知って実践することです。お金もかからなくて、効果が高いです。

食事の基本
養生の考え方では「季節に合わせて食べる」「体質に合わせて食べる」「食べ過ぎない」、この三つが大切です。
季節外れのものを食べないことって、体にとって大切なことなんです。
食べ物の性質を知るのと同じくらい大切なのが調理法の影響です。「生→湯がく→茹でる→蒸す→煮る(煮込む)→炒める→揚げる」の順に、温め効果が高くなります。
体質を判断して、それに合わせた生活(食生活)を送ることが大切だと考えています。おおまかにいえば、体が「冷」か「熱」、「乾」か「湿」のどちらに傾きやすいかの組み合わせで考えます。体質の分類は、冷乾・冷湿・熱乾・熱湿の四分類に、特殊な状態として、血液がうまくめぐっていないことを示す「?血」の状態を加えて五分類としています。

食べ過ぎ
東洋医学では、何ごとも中庸を最上とします。過剰なものはマイナスと同じだと考えるのです。ちょうどいい量を越えたらまったく意味のないことになってしまいます。それと、隠れた食べ過ぎというのもダメです。おやつも食べたいから三度の食事を減らしてカロリーの帳尻を合わせたり、アルコールが飲みたいけれど太りたくないからと食事自体を完全に抜いたりする。水分の取り過ぎもありますね。水分を取り過ぎると体内で滞って「痰飲」という状態になります。体が重だるくなったり、気分が憂うつになったり、消化がおかしくなったりするのです。

元気になる旬ごはん
どんなに体によい食事でも、おいしくなければ長続きしません。季節に沿った食べ方の知恵を知って、健やかな体と心を手に入れてください。

春の暦
2月 立春:2月4日ごろ 旧暦の正月は、このころ。春の始まりといっても冬の峠を越えたばかりですから、厳しい寒さは続きます。
   雨水:2月19日ごろ 空から降ってくる水が雪から雨に変わる時期。地上の雪や氷もとけ始めます。
2月の食養生
体を温める食事が必要ですが、本格的な春に向かう準備も必要です。花粉症などのアレルギーに備え、香りや苦みのある春野菜や山菜を食べて解毒を促し、免疫力を高めましょう。
3月 啓蟄:3月6日ごろ 日差しが大地を温め、冬眠していた虫やカエルたちが土の中からはい出してきます。
   春分:3月21日ごろ 昼と夜の長さが同じになる春分。ここを境に 日が長くなり、春らしい陽気になっていきます。
3月の食養生
外界の変化に対応しきれず、自律神経も乱れがち。無気力感や頭痛、イライラに悩まされる人は、香りの強い春野菜で肝機能をアップさせると、体調や気持ちが安定するといわれます。
4月 清明:4月5日ごろ 空はすがすがしく、花々が咲きそろうとき。ようやく春を実感できる時期です。
   穀雨:4月20日ごろ 穀物を育てる恵みの雨が降るころ。暦は春から夏への変わり目=「春の土用」にもあたります。
4月の食養生
酒席の多い月、肝臓をいたわる食材をたっぷりと摂りましょう。肝臓を疲労させる油っぽいものや、酸味の強いものは食べ過ぎないように注意しましょう。

春にはこんな食べ方を!
春の暖かさに目覚めた体は、冬の間にたまった毒素を外に出そうと急激に頑張り始めるため、体内の解毒を担当する肝臓に負担がかかります。五臓の「肝(かん)」に対応する色は「緑」。デトックス作用のある緑色の野菜を中心に、肝臓をいたわる食材を選びましょう。
緑色の食材 にら、キャベツ、青菜類、グリーンアスパラガス、絹さや、セロリ、クレソン、青じそ、山菜など
冬の間にたまった老廃物を排出し、肝臓の働きを助けます。苦みのある春野菜は毒素を引き出し、免疫力を高めるので、花粉症の備えにも。
良質なたんぱく質
大豆、大豆製品、帆立て貝、あさり、脂肪分の少ない魚介や肉など
疲れた肝機能を修復する働きがあり、肝機能の回復に役立ちます。

夏の暦
5月 立夏:5月6日ごろ 春分と夏至の中間。過ごしやすい気候ですが、日ざしはすっかり夏らしく強くなります。
   小満:5月21日ごろ 気温が上がり、あらゆる生命が地上に満ちる時期。草花も動物たちもいきいきと輝きます。
5月の食養生
急激に気温が高くなり、空気も乾いてきます。野菜や果物から水分を補給し、強い紫外線に負けないよう、ビタミンCが多い食材をたっぷりと。
6月 芒種:6月6日ごろ 本来は穀物の種まきのころ。日本では稲の植え付けや麦の刈り入れ期にあたります。
   夏至:6月22日ごろ 一年中で最も昼が長いのがこのころ。ジメジメした梅雨の時期でもあります。
6月の食養生
湿気の多い梅雨は汗をかきにくく、気圧の変化で体がむくみやすくなります。胃腸を壊しやすい時期なので、枝豆やそら豆のように、胃腸を冷やしすぎずに水分代謝をよくする食材がおすすめです。
7月 小暑:7月7日ごろ 雨の日も続きますが、晴れ間の暑さはいよいよ本格的になります。梅雨の晩期には集中豪雨もあります。
   大暑:7月23日ごろ 文字どおり、一年で最も暑さが厳しい時期。「夏の土用」にもあたります。
7月の食養生
色の濃い夏野菜とともに、豚肉や麺類、豆類など疲労回復効果のあるビタミンB1の豊富な食材をとり、暑さに負けないパワーを蓄えましょう。土用には黄色い食材を使ったおかずも大切です。

夏にはこんな食べ方を!
中国では、汗は血からつくられると考えられ、汗をよくかく夏には、心臓や血液循環器系に負担がかかるといわれています。五臓の「心(しん)」に対応する色は「赤」。目に鮮やかな赤い食材、色の濃い野菜から、夏バテを防ぐパワーをもらいましょう。冷房による「夏の冷え」を感じたら、熱を冷ます食材を控え、しょうがやねぎで温めましょう。
赤い食材 トマト、にんじん、赤ピーマン、クコの実、まぐろ、かつお、牛肉、豚肉(赤身)など
血流をよくする、血液に栄養を与えるなど、血液の状態をよくして心臓の機能を高めます。
熱を冷ます食材 きゅうり、とうがん、ゴーヤー、トマト、なす、緑豆など
水分を補給し、体の内側から熱を冷まします。・利尿作用を高め、老廃物を排出します。
むくみを解消する食材 たけのこ、枝豆、そら豆、とうもろこし、茶葉など
体を冷やさずに利尿作用を高め、むくみを解消するのに役立ちます。

秋の暦
8月 立秋:8月8日ごろ 秋とは名ばかり。まだまだ猛暑は続きますが、これからの暑さは「残暑」と呼ばれます。
   処暑:8月23日 暑気がおさまる、という意味の時候。朝夕わずかながら涼しくなり、台風到来の便りも聞こえ始めます。
8月の食養生
暦は秋ですが、 暑い日の食事はまだ夏仕様。熱をためないように夏野菜をたっぷり使い、疲労を回復するビタミンB1の豊富な豚肉や小麦粉の麺類なども合わせて元気に過ごしましょう。
9月 白露:9月8日ごろ 夜に冷えた大気が朝に露となり、草木に宿るのが見られるころ。秋の気配が感じられます。
   秋分:9月23日ごろ 昼と夜の長さが再びほぼ同じになり、ここを境に日は短くなり、涼しさ、寒さが増していきます。
9月の食養生
年々暑さは長引く傾向にありますが、夏に比べて空気は乾燥してきます。肺を潤す白い食材、みずみずしい果物をたくさん食べ、粘膜を刺激しやすい薬味類や甲殻類は控えめにしましょう。
10月 寒露:10月8日ごろ 草木に宿る露も冷たくなり、本格的な秋に。五穀の収穫もたけなわな農家の繁忙期です。
    霜降:10月24日ごろ 北の地方から順々に、初霜の知らせが聞かれるころ。動物たちも冬支度を始めます。
10月の食養生
白い食材とともに、毎日少しずつ黄色い食材もとって風邪を予防。加えて、免疫力を高めるきのこや栄養価の高い木の実なども食べ、食生活も冬支度をしましょう。

秋にはこんな食べ方を! 
体に熱がこもったままに秋を迎えると、空気の乾燥とともにせきが出たり、のどや鼻、皮膚が炎症を起こす原因になります。これらの器官につながっている肺を潤すことで、トラブルを解消しましょう。五臓の「肺(はい)」に対応する色は「白」。白い野菜や果物の出回る前は、夏野菜や果物で体に熱をためないように心がけて下さい。乾燥や菌から粘膜を守るためには、黄色い食材も効果的だといわれています。
白い食材 蓮根、かぶ、大根、里芋、長芋、梨、くわい、鶏肉、白身魚など
体液を増やし、肺に潤いを与えることで、のどや鼻、肌のトラブルを防ぎます。
熱を冷ます食材 トマト、うり類、なすなど
秋の初めは、夏の間に体にたまった余熱を冷まし、熱による乾燥から身を守ります。

冬の暦
11月 立冬:11月8日ごろ 地上の生命の活動が休止する冬の始まり。日に日に空気が冷え込み、冷たい北風が吹き始めます。
    小雪:11月23日ごろ 本格的な寒さまでには至りませんが、各地で初雪の便りも聞こえ、冬を実感するころです。
11月の食養生
体を温める食材や薬味類を多めにとり、この時期においしいきのこ類や木の実もたっぷりと食べましょう。中国では立冬に木の実を食べ始め、冬の間毎日食べる習慣があります。
12月 大雪:12月7日ごろ 冬型の気圧配置が強まり、山々や北の地方では雪が降り積もり始めます。
    冬至:12月22日ごろ 一年で最も夜が長い日。これから少しずつ昼が長くなるとはいえ、寒さはますます厳しさを増します。
12月の食養生
引き続き、黒い食材、体を温める食材をとりながら、柚子、みかん、きんかんなどのかんきつ類で風邪予防。食べすぎやすい年末年始には大根、白菜など消化を助ける冬野菜で胃腸もいたわって下さい。
1月 小寒:1月6日ごろ いわゆる「寒の入り」。ここから節分(立春の前日)までの時期を「寒」といい、最も気温が低くなります。
   大寒:1月21日ごろ その名のとおり一年でいちばん寒い時期。武道などの「寒稽古」や保存食の「寒仕込み」のシーズンです。
1月の食養生
最も冷え込む時期だけに、血管系のトラブルにも注意。黒い食材や体を温める食材のほか、ほうれんそうや小松菜など色の濃い冬野菜や、青背の魚や木の実で血流をよくしましょう。

冬にはこんな食べ方を!
腎臓などの泌尿器系やホルモン系、免疫系の臓器は、冷えに弱いため冬に不調を起こしやすく、ぼうこうや婦人科系のトラブルが多くなります。
五臓の「腎(じん)」に対応する色は「黒」。冷たい飲み物食べ物を避け、黒い食材、体を内側から温める食材を多めにとりましょう。腎臓などの働きを助けるとともに、風邪予防にも効果があります。
黒い食材 きのこ類、きくらげ、昆布、ひじきなどの海藻類、ごぼう、黒ごま、黒豆など
血液の状態をよくし、ホルモンバランスを整えます。きのこ類は免疫力を高め、冬を乗り切るパワーを与えてくれます。
体を温める食材 しょうが、にんにく、とうがらし、ねぎ、たまねぎ、えび、羊肉、牛肉、木の実類など
冷えやすい腎臓や胃腸の働きを助けます。寒い時期に消耗しがちな体力を増強します。良質な油の多い木の実類には、冬に弱りやすい血管を丈夫にする効果もあります。

参考文献
・若林理砂:「養生こよみ」.飛鳥新社.2014
・NHKきょうの料理シリーズ:「薬膳の知恵をいかすパン・ウェイさんの元気になる旬ごはん」.NHK出版.2014
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