2012-11-01 07:12
東洋医学研究所
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図1 エビングハウスの忘却曲線

20分後には、42%を忘却し、58%を覚えていた。
1時間後には、56%を忘却し、44%を覚えていた。
1日後には、74%を忘却し、26%を覚えていた。
1週間後には、77%を忘却し、23%を覚えていた。
1ヶ月後には、79%を忘却し、21%を覚えていた。

なんと我々は、覚えたことを20分で4割、次の日には7割以上も忘れてしまうのです。
それだけ我々の脳というのは忘れやすいのです。しかし忘却曲線をよく見てみるともう一つの特徴が見えてきます。それは、次の日には7割以上も忘れているのに、1ヶ月後に8割になりますが、次の日とそれほど変化がないのです。つまり記憶に残った2割は意外と長時間覚えているのです。これはつまり、いらない記憶はすぐに忘れて、重要な情報や注意して覚えておかなければならないことは忘れないのです。私たちの脳は記憶すべきものと消すべきものを選択しているということです。ただ脳の機能として記憶するよりも忘れる割合が高いということです。ですから覚えておきたいことは何度も繰返して脳に重要だということを教えてあげましょう。

記憶しすぎる弊害
 先ほどは忘れやすいということをお伝えしましたが、記憶が良すぎると一体どうなるのでしょう。実験によって記憶力を高めたマウスや記憶の天才と呼ばれる方も実は、決して良い思いをしているわけではありません。むしろ、記憶力が良すぎると、忘れることが出来なくなりそのほうがかえって大変なのです。

 例えば、マウスの実験では、普通のマウスでは恐怖の記憶として保持されないくらい弱い刺激(照明の位置やまわりの環境が少し違うだけ)でも、天才マウスはストレスに感じて混乱してしまうのです。

 また人では、一つの言葉で連想される、生まれてからの記憶のすべてが、逐一頭に浮かんできます。そして、その記憶の波に翻弄されるため、言葉を直接的な意味で使わない比喩などを理解するのが苦手で、記憶を整理する必要がないので、物事を一般化したり、抽象化したりすることもできなくなってしまいます。忘れられないというのは、実に大変なことなのです。

年をとっても脳は年老いていない
鍼治療をしているとたまに、最近物忘れがひどいから、頭がよくなる鍼を打ってくださいとお願いされることがあります。しかし、年をとり脳が衰えを感じるのは、脳細胞自体の機能が落ちているからではありません。実はシータ波と呼ばれる脳波が出にくくなっていることに原因があるのです。
シータ波は新しい場所を検索したり、ものごとに注意したり、興味をもつなど「やる気」がわいているときに出る脳波です。このシータ波が出ているときは、その脳は何かを見て知り、覚えようと意欲的になっています。学習をして記憶を高めるには、このシータ波が出ている時が最も良い状態なのです。
歳をとると注意力や探索心が少なくなるので一見衰えているように感じてしまいますが、これはシータ波の量が減っている状態なのです。これがいわゆるマンネリ化です。実は脳が衰えたわけではなく、使わなくなり機能していないだけなのです。ですから、90歳以上の元気な人をよくみていると、とても前向きでいろんな事に挑戦している人が多いのも納得がいきます。以前80歳から英語の勉強を始めたおばあさんをテレビで見たことがあります。やはりとてもお元気で、英語だけでなく水彩画や折り紙など多彩な趣味をお持ちでした。

自分の好きになれる趣味を一つでも見つけ、人生を楽しみ、脳も健康でいられるようになれば、日常がもっと楽しく感じられるのではないでしょうか。

脳がいつまでも元気でいられるように、何か新しいことに挑戦してみてはいかがですか?

引用文献・参考文献
忘却曲線 ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%98%E5%8D%B4%E6%9B%B2%E7%B7%9A
池谷祐二:脳と心.Newton 別冊.2010.11
池谷祐二:記憶力を強くする.講談社.2001.1
山本大輔:図解雑学 記憶力.ナツメ社.1998.12
甘利俊一・伊藤正男・井ノ口馨・山口陽子:脳のニューロンと記憶のしくみ.Newton.2007.2
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