幸福をまねく生活習慣 東洋医学研究所?グループ  栄鍼灸院 院長 石神 龍代
2013-02-01 07:13
東洋医学研究所
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
脳の構造と機能

脳内の重要な三大神経系
神経の伝達の仕組み
 脳の神経細胞は軸索を伸ばして、次の神経細胞へ刺激(インパルス)を伝達します。刺激を伝達する接合部はシナプス間隙と呼ばれる部分で、ここに神経伝達物質を放出することで刺激を伝えるのです。神経の伝達をうまくするには、神経伝達物質の量が十分に出ていること、そして受け手の細胞の受容体の数、再取り込みの活動が正常であることが大切なのです。
危機を管理するノルアドレナリン神経
 ノルアドレナリン神経の出発点は、脳幹の左右の青斑核に左右対称に存在します。そして大脳皮質をはじめ、大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、広範囲の脳神経に軸索を伸ばし影響を与えています。
 ノルアドレナリン神経は脳内における危機管理センターのような役割を担っています。生命を危機に陥れる可能性のある各種のストレス刺激が、ノルアドレナリン神経を興奮させます。
「快」と「報酬」を司るドーパミン神経
 ドーパミン神経の出発点は、脳幹の左右の線条体に位置しています。ドーパミン神経は大脳皮質の前頭前野や大脳辺縁系などに軸索を伸ばして、ドーパミンを分泌しています。
 ドーパミン神経は何かをしたときに得られると期待する「快」や「報酬」と、その結果、実際に得られた「快」や「報酬」の量の差が大きいほど興奮します。報酬を期待しているからこそ、一生懸命働いたり勉強したりするのです。
リラックスしながら集中力を高めるセロトニン神経
 セロトニン神経の出発点は、脳幹の縫線核にあり、左右の脳の正中に位置しています。このことがセロトニン神経のバランスを調整するという性質を物語っています。縫線核の近くには呼吸、歩行、咀嚼などの生きるうえで重要な運動を司る中枢があり、セロトニン神経と深いつながりがあります。セロトニン神経は軸索を脳全体の広い領域に伸ばし、ネットワークを構築しています。
 脳の中に、心、自律神経、筋肉、感覚、大脳の働きにまで、つまり心にも頭にも体にも影響を与える神経があるということ自体が大変な驚きです。
  セロトニン神経はオーケストラの指揮者のように脳全体をコントロールしてバランスを整える働きを担い、意識や元気のレベルを調整する働きをしていて、リラックスしているけれど集中力はあるという落ち着いた脳の状態を作り出しています。
 
前頭前野と三大神経系
 三大神経系は高度な人間らしい心を担う前頭前野にそれぞれの軸索を伸ばして活動しています。前頭前野にある「仕事脳」の部分にノルアドレナリン神経、「学習脳」にドーパミン神経、「共感脳」にセロトニン神経が深くかかわっています。同時に各種のストレスもこれらの三つの脳と関係しています。
 不快な身体的なストレスを受けるとノルアドレナリン神経が興奮し、それは前頭前野の「仕事脳」を緊張させます。適度な緊張は仕事の能率を上げますが、緊張のし過ぎはあがりや硬さとなって仕事やパフォーマンスにマイナスになります。
 快の情動を誘発するドーパミン神経の興奮には、報酬が必要です。私たちは、さまざまな努力、すなわちよい成績、高い地位、豊かな生活などを求めて、一生懸命に努力します。その意味では、ドーパミン神経と「学習脳」は私たちの営みに大切です。
 「共感脳」と関連するセロトニン神経は、ノルアドレナリン神経の興奮し過ぎを鎮め、ドーパミン神経の暴走を食い止めて、心のバランスに大切な役割を果たします。愛情や共感については、見返りを求めない他人への働きかけがセロトニン神経には不可欠になります。
 このように前頭前野を構成する学習脳、仕事脳、共感脳と三大神経系は互いに深い関係にあります。

セロトニンを増やすには、生活習慣の改善から
 セロトニンを増やすには「不規則な生活」や「睡眠不足」などの現代社会の生活習慣を改善することが第一です。
 朝起きて太陽の光を浴び、適度な運動とバランスの良い食事を摂るなど、規則正しい生活を心がけましょう。
 また、セロトニン神経はリズミカルな運動によって活性化されるという特徴があります。最も基本的なリズム運動として、歩行運動、食事の際の咀嚼(そしゃく)、意識的な呼吸などのリズム運動があります。これらのリズム運動はセロトニン神経を刺激して覚醒状態を高める効果があります。

セロトニンを増やす生活習慣(日本はセロトニン活性化社会だった)
○朝は早く起き、夜は早く寝る
 セロトニン神経は日光の刺激で活性化します。
 人間の脳と体は太陽が昇ると活動するようにできています。
○じっとしていないで体を動かす
○一つのことばかり突き詰めて考えない
○家族にも他の人にも挨拶をし、なごやかにつきあう
○子供やお年寄り、弱い人をいたわって手助けする
○何事もほどほどを心がける
○食べ物はよく噛んで、バランスよく食べる
    セロトニン神経の出発点である脳幹の縫線核の近くには呼吸、歩行、咀嚼に関係する中枢があり、呼吸(腹式呼吸)や歩行、咀嚼によるリズム運動でセロトニンが増えます。
 セロトニンは、トリプトファンという必須アミノ酸から作られます。大豆や、豆腐、納豆、みそなどの大豆製品、赤身魚、チーズ、バナナなどに含まれています。昔ながらの日本的食生活でトリプトファンは充分に補えます。

セロトニンと付き合うコツ
 セロトニンと付き合うコツは、「長時間より長期間」。毎日30分のトレーニングを3カ月継続すると、脳が変わります。最終的には、神経の構造である自己受容体の数が変化しなければなりません。そのためには、毎日の継続した刺激が必要で、約3カ月すると、自己受容器の数がはっきりと変化してきます。毎日きっちり30分でなくても、最初は5分くらいから始めて、疲れている日は20分できりあげたりして、なんだかんだで3カ月続けているうちに、脳が変わります。脳が変わるということは、あなたが別人になっているということです。

おわりに
 東洋医学研究所?の黒野保三所長は満82歳ですが、現役で鍼治療に専念され、情熱をもって後進の指導に当たっておられます。まさにセロトニンを増やす生活習慣を継続され、毎日鍼治療を受けておられます。
 どうか皆さん、セロトニンを増やす生活習慣を身につけて、ますますストレスフルな現代を元気に幸福に暮らしていただきたいと思います。そして、予防医学の観点から、生体の制御療法としての鍼治療を定期的に受療されることをおすすめいたします。  

文献
1)有田秀穂、中川一郎、「セトトニン脳」健康法、講談社α新書、2012
2)http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/8686/serotonin4.htm
3/3
先頭ページ |  前のページ
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
検索
キーワード

カテゴリ
よくある質問 (10)
コラム (58)
患者さんの声 (54)
活動内容 (6)
研究業績 (12)
講演・メディア掲載実績 (18)
適応症の治療案内 (82)
月別アーカイブ
2017年8月 (3)
2013年2月 (3)
2013年1月 (4)
2012年12月 (3)
2012年11月 (7)
2012年10月 (4)
2012年9月 (86)
2012年8月 (74)
2012年7月 (15)
2012年5月 (1)
2012年4月 (1)
2012年3月 (1)
2012年2月 (1)
2012年1月 (1)
2011年9月 (1)
2011年6月 (1)
2011年4月 (1)
2011年2月 (2)
2011年1月 (1)
2010年12月 (1)
2010年11月 (1)
2010年10月 (1)
2010年9月 (1)
2010年8月 (1)
2010年7月 (1)
2010年6月 (1)
2010年5月 (1)
2010年4月 (1)
2010年3月 (1)
2010年2月 (1)
2010年1月 (2)
2009年12月 (1)
2009年11月 (1)
2009年9月 (1)
2009年8月 (1)
2009年7月 (1)
2009年5月 (1)
2009年4月 (2)
2009年3月 (1)
2009年2月 (1)
2009年1月 (1)
2008年10月 (1)
2008年9月 (1)
2008年5月 (1)
2007年6月 (1)
2007年3月 (1)
2006年11月 (1)
2006年6月 (1)
2005年11月 (1)
2005年9月 (1)
2005年8月 (1)
2005年6月 (2)
2005年5月 (1)

友人に教える
お問い合わせ

ホーム
上へ
東洋医学研究所

東洋医学研究所
このサイトは携帯電話向けサイトです。
携帯電話でご覧ください。