たばこについて2 〜日本のたばこの歴史〜 東洋医学研究所?グループ すずらん鍼灸院 院長 迫井 豪
2014-06-01 16:01
東洋医学研究所
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はじめに
たばこは、ナス科のタバコ属の植物です。その植物としての起源をたどっていくと、アメリカ大陸に行き着きます。
1492年にスペインの後ろ盾を得て"黄金の国"を目指したコロンブスはアメリカ大陸に到達しました。そして、コロンブスが原住民からたばこをもらったことから喫煙習慣がスペインに伝えられました。
さらに、たばこはスペインからヨーロッパ各地へ、そして世界中に広まり"黄金の国"ジパング(日本)に伝わりました。
そこで今回は、日本のたばこの歴史についてお話ししたいと思います。

江戸時代
日本へのたばこの伝来は諸説があり、天文12年(1543年)の種子島への鉄砲伝来時、慶長10年(1605年)前後の南蛮渡来などがあります。煙管(キセル)による喫煙が主で、江戸時代初期には全国に普及しましたが、非常に高価な薬品として普及したため喫煙できるのは裕福な武士か商人のみでした。
日本の喫煙に関する最古の資料は慶長年間に存在し、慶長14年(1609年)に記された八条宮智仁親王による『煙草説』、修道士による『ブルギーリョスの報告書』などがあります。種子の伝来における最古の記録は、慶長6年(1601年)、スペインフランシスコ会修道士ヘロニモ・デ・ヘススが療養中の徳川家康にタバコ由来の薬とタバコの種子を献上したというものです。財務省財務総合政策研究所の資料によれば、葉たばこは薬草として、慶長年間に各地に普及していました。
徳川家康は、駿府城内で不審火による火災が度々発生したことで、秀忠が将軍時代の慶長14年(1609年)禁煙令を出しました。以後、江戸幕府はしばしば禁煙令、たばこ耕作・売買の禁令を出し、財産没収の罰則も設けていましたが、その頃の落首(落書)に「きかぬもの、たばこ法度に銭法度、玉のみこゑ(御声)にけんたくのいしや(医者)」というものがあり、完全に統制されていたわけではありませんでした。
たばこの禁令を出す理由は、火災の他、京の街に出没する反社会勢力のかぶき者が当時珍しい南蛮から伝来したたばこの喫煙を徒党のしるしにしていたので、それを取り締るためであり、また他の理由では、たばこ栽培農家の増加でコメの生産高に影響が及ぶことを防止するためでした。
3代将軍家光が将軍になった元和9年(1623年)にも禁煙令が出されましたが、寛永期には喫煙が可能となり、寛永11年(1634年)に三重県のあたりではたばこ座が許可されました。
しかし、寛永19年(1642年)、寛永の大飢饉が起きた年に、本田畑のたばこ耕作が禁止となり、寛永20年(1643年)の田畑勝手作禁止令で田畑のたばこ耕作も禁止されました。家光の時代には煙管狩りが実施されました。
慶安2年(1649年)、江戸では家屋内の喫煙が許可され、4代将軍家綱が将軍になった承応3年(1654年)、江戸城内は全面禁煙から場所を限り許可されました。
寛文10年(1670年)以降、本田畑のたばこ耕作禁止が強化される禁令が多数出され、延宝3年(1675年)にはたばこ耕作を半減にして耕作面積を役所に届け出る覚書が出されました。
綱吉が5代目将軍時代になった元禄期頃にはたばこの新たな禁令が出なくなりました。
家光の時代以降、喫煙が一般に波及すると、各藩では運上金(営業税)、冥加金(免許手数料)等の課税、たばこ耕作奨励(明暦2年(1656年)の松山藩など)の措置がとられました。
ちなみに、徳川将軍で「初めて喫煙した将軍」と言われているのは、10代将軍家治です。

健康問題
江戸時代からたばこに健康問題があったことがわかる資料として、正徳2年(1712年)に貝原益軒が著した『養生訓』では、「巻第四 飲茶 附:煙草」において、「煙草は性毒あり」「煙をふくみて眩ひ(めまい)倒るゝ事あり」「病をなす事あり」「習へばくせになり、むさぼりて後には止めがたし」等の記述があります。
卍山道白(まんざんどうはく)和尚の広録『鷹峰卍山和尚廣録』(元文年間に刊行)では受動喫煙の害が医学的に記述され、面山瑞方禅師の広録『永福面山瑞方和尚廣録』(安永年間に刊行)でも同様の記述があります。
卍山和尚の広録は受動喫煙・残留受動喫煙被害を記述した文献として、ゲーテ(1749年〜1832年)以前の世界最古の文献であると、来馬明規(東京・巣鴨とげ抜き地蔵尊・高岩寺住職、医学博士)は発言しています。
明治時代の文献では、明治13年(1880年)創刊の『養生雑誌』(養健舎)がたばこの害を記述し、外国文献の抄訳形式により掲載しました。
明治14年(1881年)出版の『内科要略』は、「慢性尼古質涅中毒(ニコチン依存症)」と慢性動脈内膜炎との関係に言及し、喫煙を粥状動脈硬化の危険因子と見なしました。

おわりに
以上のように、たばこの害は古くから知られており、また禁煙ほどリスクの少ない健康法は現代でもなかなかありません。しかし、いくらたばこの害を並べたてても喫煙者にとっては耳にタコで素直に受け入れられないのも事実です。禁煙のとっかかりに歴史に思いを馳せてみるのも面白いのではないでしょうか。

引用・参考文献
○ 厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/
○公益財団法人 日本学校保健会 公式ホームページ
              http://www.hokenkai.or.jp/
○禁煙センセイの "楽しく禁煙" 
              http://smoke-free.cocolog-nifty.com/blog/
○日本の喫煙 - Wikipedia
        http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%
           AC%E3%81%AE%E5%96%AB%E7%85%99
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