痛み止めについて 東洋医学研究所?グループ 二葉はり治療院 院長 甲田 久士
2015-04-01 09:10
東洋医学研究所
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平成27年4月1日号

はじめに
体に痛みを感じ病院を受診すると、お医者さんは痛み止め(抗炎症薬)を出してくれます。その時に、皆さんはお医者さんから「あなたは胃が丈夫か」とか「胃は強いか」と聞かれた経験はありませんか?また痛み止めを飲んでから胃が痛くなったり、胃の不快感、便秘などの胃腸障害になった体験はありませんか?この現象はやはりお医者さんからいただいた痛み止めが胃の機能に悪さをしているからです。
今回は痛み止めが胃の機能に障害を引き起こす仕組みをお話ししたいと思います。

炎症を抑えれば痛みも止まる!
組織が障害を受けると、痛みを引き起こしたり、感じやすくさせるサイトカイン類やプロスタグランジンなどの物質が生成されます。これを炎症といいます。
この炎症は組織の損傷により始まります。組織が損傷するとホスホリパーゼA2(PLA2)によって、細胞膜のリン脂質がアラキドン酸に変化すると同時に、アラキドン酸がシクロオキシゲナーゼ(COX)に作用することにより各種のプロスタグランジンを産生します。プロスタグランジンは発痛増強物質であるため、組織が障害を受けると痛みが増強します。
抗炎症薬である非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)はシクロオキシゲナーゼの作用を阻害し、プロスタグランジンの産生を抑制します。そのため炎症が抑制され、痛みが鎮まるのです。
抗炎症薬にはステロイド性鎮痛薬と非ステロイド性鎮痛薬が存在しますが、ステロイドを大量投与したり長期間使用すると、胃潰瘍などの胃腸障害を誘発するなど多くの合併症や副作用がおこってくることが知られています。
痛みの治療では非ステロイド性鎮痛薬を用いることが一般的です。しかし、非ステロイド性鎮痛薬でも胃腸障害を起こすものがあります。

非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)の作用と副作用
体の炎症や痛みには、体内で作られるプロスタグランジンという物質が関係しています。組織が障害を受けると、その部位にプロスタグランジンが集まり、炎症を悪化させたり、痛みを強めたりします。
非ステロイド性鎮痛薬には、プロスタグランジンの生成を抑える作用があり、損傷を受けた部位のプロスタグランジンが減少することで、痛みが軽減されます。
一方、プロスタグランジンは、胃の粘膜でも生成されており、粘液の分泌を促進する働きをもっています。粘液は、胃酸が粘膜を障害しないように粘膜を覆っています。
しかし、非ステロイド性鎮痛薬を使用すると、損傷を受けた部位と同様に、胃でのプロスタグランジンの生成も抑えられてしまいます。その結果、副作用として粘液が減少して、粘膜を守れきれなくなり、胃酸によって粘膜が傷つくと、胃潰瘍が起こってしまいます(図)。

図 非ステロイド性鎮痛薬とプロスタグランジン

対策としては
よく知られている胃潰瘍の主な症状は「みぞおちの痛み」で、空腹時に刺すような痛みが起こりやすいという特徴があります。非ステロイド性鎮痛薬による胃潰瘍でも症状は同じです。非ステロイド性鎮痛薬を使い始めてから胃潰瘍が起こるまでの期間はさまざまで、1か月間程度のこともあれば、数日で胃の調子が悪く、胃がもたれる、食欲がなくなる等と感じる人もいます。非ステロイド性鎮痛薬を使っていて、胃の調子に変化があったときには、早めに診てもらっている先生に相談をすることが大事です。

痛み止めを使うときの注意事項
・指示通りに使う−どんな薬を使う場合も、用法・用量を守ることが大切です。非ステロイド性鎮痛薬も、指示より多く使わないように、空腹時には服用しないようにします。
・「お薬手帳」を使う−複数の医療機関から薬の処方を受けていることがあります。「お薬手帳」を持参すると、非ステロイド性鎮痛薬の重複を避けるのに役立ちます。
・「かかりつけ薬局」をもつ−複数の医療機関で処方された薬も、1つの薬局で受け取るようにすると、薬が一元管理されます。非ステロイド性鎮痛薬の重複や、薬どうしの相互作用など、複数の薬を使う問題がチェックしやすくなります。
・薬について理解する−作用や副作用などを理解したうえで、薬を使うように気を付けましょう。

おわりに
今回は痛み止めが体に与える影響について、お話をさせていただきました。痛み止めは、痛い部位では痛みを軽減しますが、胃や腸では粘膜に炎症を起こします。痛み止めを長期に服用すると、胃潰瘍になり、吐血や下血が起こることもあります。
東洋医学研究所?所長の黒野保三先生は1973年に「超音波と鍼の併用による鎮痛効果について」の研究をされた結果、91.9%の有効率を定量的に見出され、疼痛疾患に鍼治療は効果があることを実証されました。
痛みを感じたら我慢をせず早期に第一選択の治療として、副作用のない鍼治療を受療されることをお勧めします。


参考文献
今日の健康:2010.8
伊藤和憲著:図解入門 よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ 秀和システム 2011
黒野保三:超音波と鍼の併用による鎮痛効果について.自律神経雑誌20巻4号.1973
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