平成21年12月1日号
平成17年8月1日号に『平滑筋と鍼灸医学』と題したコラムを書かせていただきました。この中でなぜ、平滑筋が鍼灸と関係があるのだろう、そしてそもそも平滑筋とは何かということから書かせていただきました。また、参考にしていただけたらと思います。
その中心の話として、鍼灸の適応疾患は多種にわたり、平滑筋を制御するには自分の意思では動かせない自動的な調節があるといいました。自分の意思で動かせないものをどうやって調節していくかというときに、自律神経が大きなキーワードになっていくこともお話しました。
もう一度復習しておきますが、この自律神経というのが平滑筋を動かす本体で、この神経が自分の意思と関わりなく働き、消化、呼吸、代謝といった生命活動の働きを調節しています。例えば、食事をすると胃液が出て胃の動きが活発になり食べ物を消化していく、運動や緊張をすると血圧が上がり心臓がドキドキする、などであります。このように自分の意思に関わらず、様々な刺激に対応しながら体をコントロールしているのが自律神経です。
この自律神経には、交感神経と副交感神経の二つがあります。この二つの神経が拮抗して働き調節をしているのです。
さて、そこで鍼灸治療をうけた場合にどのような効果があるかという研究が報告されるようになり、その中において平滑筋関係でいうと特に消化管といわれる、胃や腸についての研究があります。代表例をあげてみますと胃の動きを調節するときに、手や足の末端のほうを刺激すると胃の働きが強くなり、体幹を刺激すると胃の働きが弱くなるという報告もあります。これも非常に大事なデータであります。つまり、今刺激したことによってすぐに胃の動きが調整できるという証拠になります。
そうなってくると、もう一つ疑問がわいてきます。鍼灸治療が予防や健康維持に一役買っているということに異論はないと思いますが、消化管でもそのような効果が期待できるかということです。
そこで、研究をおこないました。糖尿病という病気はご存知だと思いますが、この疾患は血糖値があがるというだけでなく、二次的に神経障害をおこすといわれています。そして、胃腸もその影響で動きが悪くなったり、不安定な動きになることが報告されています。そこで、糖尿病モデル動物のラットの胃を用いた実験をおこないました。そしてこのラットに25週間にわたって週に2回鍼治療をしたラットと比較検討しました。実験方法は収縮実験です。ラットから胃を取り出して胃の筋肉だけの状態(図1)にして、両端を糸でしばって張力をはかります(図2)。
(図1) (図2)

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