
(公社)生体制御学会第262回定例講習会に参加しました
9:30〜10:20 基礎生理学
「心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価」
(公社)生体制御学会研究部長
皆川宗徳 先生
今日は皆川宗徳先生より鍼刺激が自律神経を調節する最新の研究をお話しいただきました。
黒野保三先生の「心拍変動解析による鍼刺激に対する自律神経反応の評価−腹部鍼刺激に対する自律神経反応の評価−」と題した論文が日本自律神経学会の自律神経雑誌Vol.49 No.4に掲載されました。この論文では腹部鍼刺激が及ぼす自律神経への影響について、心拍変動解析を用いて評価しており、世界で初めての報告になります。
「海外では『鍼刺激は自律神経に影響しない』という流れになっています。しかし、黒野先生の研究では『鍼刺激は自律神経を調節できる』結果が出ています。どうして正反対の結果がでたのでしょうか?
この大きな原因として、刺激の強さが挙げられます。海外では、鍼刺激の方法は『得気』という、鍼刺激による『しびれ感』、『重い感じ』、『放散する感じ』、『しめつけられる感じ』を目的としています。2010年に報告された『鍼と心拍変動、一定基準の論文を読む』では12件のRCT(ランダム化比較試験)のうち、9件において『得気』を目的とした刺激方法であり、ほとんどが強い刺激方法でした。この報告において『鍼刺激は自律神経に影響しない』という結論に達してしまいました。
それに対して、黒野先生は2011年、オートノミックニューロサイエンス誌に『ダン中(CV17)への鍼刺激は心拍変動の心臓迷走神経成分を増加させるが、中庭(CV16)への刺激では増加しない』と題して、鍼刺激は副交感神経を亢進させることを報告しています。その時、海外の論文査読者に『単刺術』という言葉を説明するのに『筋膜上圧刺激』という造語をつくって、過去の研究、治療動画を見せてようやく認められたという経緯があります。この『筋膜上圧刺激』の定義は『鍼を垂直に筋膜の表面の深さまで刺入し、筋膜に20gの圧力を加える(筋膜は貫かない)方法』となっています。
この『筋膜上圧刺激』の裏付けとして黒野先生は40年以上前より研究されています。長年の研究の上に現在の研究があり、この基盤があるからこそ、『鍼による筋膜上圧刺激は自律神経を調節する』ことを自信をもって言うことができるのです。」というお話しがありました。

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