平成21年3月1日号
はじめに
前回の糖尿病のお話では、フットケアについてのお話をさせて頂きました。しかし、糖尿病患者が糖尿病を怖い病気であると思って、生活習慣を改善し努力されることも必要でありますが、かえって糖尿病であることを受け入れることができないため、元気をなくす患者も少なくありません。
糖尿病は古くから存在する病気で、現在ではインスリンが発見されており、充分な治療を行えば、糖尿病を発症しても健康人と同様に元気よく長生きできる病気であると思います。
○糖尿病の由来
糖尿病について、最古の記載と思われるのは紀元前1,500年頃のエジプトの文書といわれています。
紀元2世紀頃、ローマの医師アレテウス(Aretaeus)は、糖尿病をジアベテス(diabetes)と命名し、『糖尿病は慢性の病気であるが、ひどくなると、肉や手足が尿に溶けて出て死んでしまう』と述べています。
2000年以上前のインドの医書に「貧乏でやせた人の糖尿病に効く薬はない。しかし、肥満した金持ちの糖尿病は粗食にして、毎日ウシを追って森を歩くと良くなる」といった意味のことが書いてあるそうです。
これは、前者は急激な症状を伴うことが伺われることから、1型糖尿病に近いと思われ、後者は生活習慣の改善により良くなり、インスリン抵抗性の存在が考えられることから、2型糖尿病と思われます。

藤原道長
糖尿病が地位の高い人や金持ちに多いことは、かなり昔からわかっており、日本でも藤原道長(966〜1027)が糖尿病であったとの記載がありますが、紀元前の中国では「黄帝内経素問」「金匱要略」に記載されている「消渇」(しょうかち)が糖尿病を指し、古代日本でも消渇と呼ばれていました。このように、洋の東西で尿の文字を使わず、水や食べ物が消えるという意味の「消渇」・「ジアベテス」の病名を与えていました。
日本では、江戸時代に"diabetes"は「尿崩」と呼ばれ始めました。"diabetes"は日本語に翻訳することができず、併記されていたオランダ語から「尿崩」と記されたと考えられています。後に"diabetes"に"mellitus"がつくと、「尿崩」は「蜜尿證」・「蜜尿病」となり、蜜の成分が糖であることが知られて「糖尿病」と呼ばれ、1907年の第4回日本内科学会後に「糖尿病」と統一されました。
○インスリンの発見
インスリン発見前の糖尿病患者の運命は悲惨なもので、当時は糖尿病と診断されることは数年以内に死亡を宣告されたようなものであり、厳重な食事療法を行っても助かる人は少なく、それかといって普通に食事をしていても病状が悪化してしまうのでありました。
バンティング

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